川崎宗則選手・「お金じゃないよ、おもしろさだよ」
野球の川崎宗則選手、愛称「ムネリン」は、1981年6月生まれの33歳である。日本のプロ野球、福岡ソフトバンクホークスを経て、米大リーグに挑戦し続け、2015年シーズンで4年目に入る。
2012年はシアトル・マリナーズで 、2013年からはトロント・ブルージェイズでプレーしている。毎年、まずはマイナー契約でスタートし、メジャー昇格を勝ち取るという努力の人である。
考えてみれば、今や米大リーグに数多くいる日本人選手の中で、アメリカ国民、カナダ国民から最も愛されている日本人選手は川崎宗則選手である。
米大リーグにおける川崎宗則選手がいかに素晴らしいか、いかに米大リーグファンから愛されているか。それが実によく分かるエピソードがある。
米大リーグ2年目のオフのことだ。ブルージェイズは、球団側が選択権を持つ川崎選手の来季契約オプションを破棄すると発表した。川崎選手はフリーエージェントとなり、日米全球団との交渉が可能になった。
日本に戻るも良し、アメリカでブルージェイズを含む全球団と交渉するも良し、という状況になったのだ。
その時、カナダ最大のニュースサイト『ザ・スター・ドットコム』に、川崎選手にブルージェイズ残留を懇願する“ラブレター”が掲載された。
「親愛なるムネノリへ」と題する手紙の要点部分を以下に掲げる。
オールスター級の選手がひしめくブルージェイズにおいて、非力なマイナーリーガーとしてチームに加入したあなたがチームに多大な貢献をもたらすとは、誰も期待していませんでした。
しかしあなたは、トロントの注目を一身に集め、そしてファンの心を掴みました。
私は、あなたにお別れを言うためでなく、お願いをするためにこの手紙を書いています。ムネ、トロントに残って!
お金のためではなく、私たちのために。幸せはお金で買えないと、皆が言うでしょう?
あなたは、バックアップ要員としてスプリングトレーニング中に契約した、32歳のショートストップにすぎませんでした。大型契約で加入したスター選手たちとは、全く立場が違いました。
それでもあなたは、残念な結果に終わったブルージェイズのシーズンにおいて、希望の光となりました。あなたのベースボールに対する情熱、姿勢、そして周囲の人間をも動かす愛を否定する人は誰もいません。
あなたは英会話帳を持ち歩きカメラの前でも躍動し、そしてダグアウトからチーム最高のチアリーダーになりました。何もかもが上手くいかなかったチームにおいて、あなたこそが私たちが応援すべき人になりました。
来年のあなたに私が望む唯一のことは……ブルージェイズに戻ってきてくれること、それだけです。
ムネ、あなたは何て言うかしら?ファンのために、残ってくれるかしら?
以上の「行かないで!」という公開“ラブレター”の送り主は、同サイトの女性記者、キム・ナーソールさんである。彼女は、記者としての立場からではなく、一ファンとして「ムネに残って欲しい」の一心だけで、綴ったとされている。
それは、そうだろう。だが、カナダ最大のニュースサイト『ザ・スター・ドットコム』が所属記者の公開“ラブレター”を掲載したことは、同サイトそのものが川崎宗則選手を同様に評価していることを意味する。凄いじゃないか、川崎宗則選手。
言わば大リーグファンを代表するがごとき、女性記者、キム・ナーソールさんからの“ラブレター”は、選手冥利に尽きる。
結果的に、川崎宗則選手は、「行かないで!」という公開“ラブレター”に応え、今日に至っている。
米大リーグにこの上なく愛される存在の川崎宗則選手だが、逆に、彼の方でも米大リーグをこよなく愛していると言える。
2015年1月19日付けのスポニチアネックスの配信ニュースは、王会長 松坂に期待 ムネリンに「10倍以上」年俸提示もフラれた… とのタイトルで、川崎宗則選手に関し、次のように伝えた。
ソフトバンク・王貞治球団会長は、ブルージェイズとマイナー契約を結んだ川崎については「ウチでやろうと、何度もメシを食いました」と話し、年俸が「10倍以上で」オファーしていたことも明かした。
つまり、ムネリンは、年俸が「10倍以上で」のオファー、それも世界のホームラン王、王貞治会長からの誘いを断ったことになる。凄いじゃないか、川崎宗則選手。
こういうニュースを目にすると、川崎宗則選手の現在の年俸はナンボ?となる。ネット先生に聞いてみたら、60万ドル(日本円にして約7,000万円)らしい。ということは、10倍として、年俸7億円のオファーを断わったのだ。差額は、6億3,000万円もある。
結局、少なくても6億3,000万円もの年俸差をものともせず、米大リーグ挑戦を選んだことになる。凄いじゃないか、川崎宗則選手。
米大リーグ挑戦にかける川崎宗則選手の思いや如何に。米大リーグの魅力について、2015年2月1日付けのサンケイスポーツの配信ニュースによれば、川崎宗則選手は、次のようにコメントしている。
「技術的なことに関しての魅力、おもしろさっていうのはちょっと日本にはない。いろんなものを探りたい」。
「日本でずっと野球をやってきて、そういうグラブの出し方があるのかとか、日本ではそんなことないのに、ということがあっち(米国)ではわんさかある」。
「僕からしたら宝の山。こっち(日本)にも宝はあるけど、あっち(米国)は山」。
これらのコメントを見ると、川崎宗則選手が言わんとするのは、「お金じゃないよ、おもしろさだよ」。
それにしても、少なくても6億3,000万円もの年俸差をものともせず、米大リーグ挑戦にかけるとは。とてつもない。彼のそうした情熱がアメリカ国民、カナダ国民の心にもろに響くんだね。
くだんの「親愛なるムネノリへ」と題する公開“ラブレター”に、次の一節があることも、けだしむべなるかな。
あなたのベースボールに対する情熱、姿勢、そして周囲の人間をも動かす愛を否定する人は誰もいません。
スポーツ界のみならず、どこでも、金、金、金の世の中にあって、「お金じゃないよ、おもしろさだよ」の川崎宗則選手。その精神が清々しい。
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