高梨沙羅選手・「もっと強い選手にきっとなれるよ」
スポーツ選手は、ただ単に、強ければいいというものではない。フィギュアスケート選手で言えば、高橋大輔選手のように、強いだけではなく、人のことを思いやるといった人間性が備わっていることが大事である。
そうしたことにまで思いをいたすとき、スポーツ観戦は、時として、観る者が身震いするほどの感動を呼ぶ。スポーツっていいなあと思う瞬間である。
2014年2月12日、ソチ五輪ジャンプ女子のノーマルヒルが行われた。弱冠、17歳の高梨沙羅選手は、日本中の期待を一身に集める。ジャンプ女子のオリンピック初代女王の座に挑んだ。
1回目の結果、高梨沙羅選手は、100mを飛び、124.1点で3位。1位は、ドイツのカリーナ・フォクト選手が103mの126.8点。
3位の高梨選手と1位のフォクト選手との差は、わずか2.7点差。2回目に確実に逆転してくれる。頑張れ、高梨沙羅選手!!
運命の2回目。高梨選手が飛ぶ。しかし、距離が伸びない。98.5m。
結果は、高梨選手は、4位。メダルに届かなかった。
しばらくして、高梨沙羅選手に対するテレビのインタビューが始まる。
「どうですか、初めてのオリンピックが終わって」
「支えて下さった方々に感謝を伝えるためにここに来たので、そこでいい結果を出せなかったことは残念です」
「いつもの大会とオリンピックが違うところはありましたか?」
「自分ではやることは 一緒なので、どの試合も変わらずに挑んでいたつもりだったんですけど…。やはりどこか 違うところがあるなと感じました」
「これからもみんなが沙羅さんのことを応援すると思います」
「またこのオリンピックに戻って来られるように、もっともっとレベルアップしていきたいと思います」
インタビュー画面には、歯を食いしばり、泣くまいとこらえながら、しかし涙する、高梨沙羅選手の姿がある。17歳の少女は、日本国民全体からの金メダル獲得の期待を一身に集めながら、必死で戦った。そして、敗れた。重圧たるや、想像を絶するものだったのだろう。
ソチ五輪から1年が過ぎた2015年2月22日、ディリースポーツの配信ニュースが流れた。沙羅4位 伊藤の銀には感動泣き、とのタイトルが付いている。配信ニュースに曰く。便宜上、番号を付す。
① 「スキー・ノルディック世界選手権・ジャンプ女子」(20日、ファルン)。ジャンプ女子で伊藤有希(20)=土屋ホーム=が89メートル、93メートルの合計235・1点で銀メダルを獲得した。今大会の日本勢メダル第1号となった。前回大会2位の高梨沙羅(18)=クラレ=は4位に終わった。
② 世界の頂点だけを狙った高梨の挑戦がまたも苦い結果に終わった。ソチ五輪に続いてあと一歩でメダルに届かず「やるせない気持ちでいっぱい」と涙をこらえるような表情を浮かべた。
③ 好不調の波が大きかった今季を象徴するような結果となったが、風に恵まれなかったことを言い訳せず「ジャンプのレベルがそこまでに達していない」と負けを認めた。
④ 伊藤の銀メダル獲得は「感動しすぎて涙が出てきた」と跳び上がって喜んだ。近年苦しんでいた2歳年上の先輩が大舞台で輝きを放ったことで、不振を味わう高梨も勇気づけられたようだ。「どんな状況でも飛べる強い選手になりたい」とさらなる成長を誓った。
ソチ五輪時のインタビュー画面には、歯を食いしばり、泣くまいとこらえながら、しかし涙する、高梨沙羅選手の姿がある。よほど悔しいのだ。
日本のエースは、ソチ五輪に続き、今回のノルディック世界選手権でも、4位と敗れた。悔しい。「やるせない気持ちでいっぱい」だ。泣きたいし、心の中では泣いている。
しかし、高梨沙羅選手は、2歳年上の先輩、伊藤有希選手の銀メダル獲得を我が事のように喜ぶ。「感動しすぎて涙が出てきた」と跳び上がって喜ぶのだ。そして、表彰台に並ぶ伊藤選手の晴れ姿を喜々としてカメラに収める。
ただ単に、強いだけのスポーツ選手は、勝てば、大げさにガッツポーズだし、負ければ、ただ泣くだけだ。人のことを思いやることなんて、できっこない。
今回、高梨沙羅選手は、自分のことでは、負けて泣きたい気持ちがいっぱいだ。だが、この子は、瞬時にそれを打ち消す。伊藤選手の銀メダル獲得に感動し、涙するのだ。感動の涙と歓喜。高梨選手が輝いて観える。
高梨沙羅選手は、高橋大輔選手のように、強いだけではなく、人のことを思いやるといった人間性が備わっている。弱冠、18歳なのに、実に素晴らしい。
「どんな状況でも飛べる強い選手になりたい」と語る高梨選手。なれるよ。高梨沙羅選手なら、もっと強い選手にきっとなれるよ。
頑張れ、高梨沙羅選手!! 頑張れ、高梨沙羅選手!!
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