スタップ疑惑・「早稲田大学関係者の良心」
世の中で何か問題が起きると、決まって用いられるのが第三者委員会という手法である。
問題を起こした組織とは関わりのない外部の有識者をメンバーとし、問題解決のための提言等をしてもらうというやり方である。
外部の有識者による第三者委員会での検討は、一見、客観性を確保しているようで、そうではないことだってあり得る。
問題を起こした組織にとって都合のいい提言等をしてもらえるメンバーを選任し、あとは阿吽の呼吸で物事を処理することは、不可能ではない。
そこは、世間の批判を浴びないよう、上手くやることに腐心するわけである。
以上のことは、言わば、第三者委員会をめぐる常識であるが、世の中には、平気で常識に反することをやる人間がいるものである。
スタップ疑惑の小保方晴子氏は、早稲田大学の卒業生で、同大学から博士号の学位を授与されている。
弁護士ドットコムの配信ニュース曰く。
2014年7月17日、小保方晴子氏の「博士論文」をめぐり、早稲田大学の調査委員会(委員長・小林英明弁護士)は、記者会見を開いた。同調査委員会は、「博士論文」には、数々の「問題点」を指摘しつつも、小保方氏の行為が「学位取り消しの規定にあたらない」と結論付けた。
この配信ニュースには、早稲田大学調査委員会が記者会見を開いた、とあるから、てっきり同委員会のメンバー全員が出席したものと捉えた。こういう場合は、メンバー全員が出席して記者会見するのが常識だからだ。
しかし、記者会見に出席したのは、早稲田大学調査委員会の委員長である小林英明弁護士が一人だけのようだ。ようだでなく、一人だけだと言わせてもらう。
というのは、記者会見の席上配布された「早稲田大学・大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」報告書に記載されている委員会の構成は、次のようになっているからだ。
I.委員会の構成
委員長 小林英明(弁護士、長島・大野・常松法律事務所)
委員 国立大学名誉教授 医学博士
東京大学名誉教授 医学博士
早稲田大学教授 医学博士
早稲田大学教授 政治学博士
奇妙なことに、委員長以外の委員は、まさに「どこの馬の骨かわからない」。国立大学名誉教授、東京大学名誉教授、早稲田大学教授とあるだけで、どこの誰かは分からない。
これでは、報告書の信頼性は、その形式的要件を欠く。「どこの馬の骨かわからない」委員が4人いると言われても、にわかに信じ難い。小林委員長が一人で作成したのかもしれない。
そうでないと言うのなら、委員4人がどこの誰か実名を明らかにしなければならない。
私は、早稲田大学調査委員会が記者会見場で配布した報告書の中身を読んでみると、唖然とする。本当に委員長と4人の委員計5人で議論したうえで報告書が取りまとめられたのだとしたら、こんなおかしな内容にはならないのではないか。
少なくとも、両論併記の部分があり得るわけであり、そんなこんなで、報告書は小林委員長一人が作成したのではないかという疑いを持っている。
驚くことに、早稲田大学調査委員会が下した結論に至る論理展開は、黒を白と言いくるめるようなものだ。
報告書は、まず、「本件博士論文には、上記のとおり多数の問題箇所があり、内容の信憑性及び妥当性は著しく低い。そのため、仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった。」と認定している。
これは、どういうことか。
まず、小保方博士論文には、多数の問題箇所があり、内容の信憑性及び妥当性は著しく低い、つまり、内容の信憑性及び妥当性において、小保方博士論文はアウトだとしているのだ。
次に、小保方博士論文が博士論文として合格し、博士学位が授与されたのは、博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備があったからだとしている。
要するに、重大な欠陥、不備があって博士論文を審査する能力がない審査体制等が、博士論文として合格する要件を欠く小保方博士論文を合格させてしまった、と報告書が認定しているのだ。
それじゃ、当然、小保方氏に対する博士学位は取り消しになるんでないの。
本来、小保方氏に対する博士学位の取り消しがなされてしかるべきであるのに、それをしないために、早稲田大学調査委員会は、無理な論理構成を持ち出す。
同調査委員会報告書曰く。
「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係(重大な影響を与えたこと)が必要と解釈すべきであるところ、本研究科・本専攻における学位授与及び博士論文合格決定にいたる過程の実態等を詳細に検討した上で、「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定した。
その結果、本件博士論文に関して小保方氏が行った行為は、学位取り消しを定めた学位規則第23条の規定に該当しないと判断した。
しかし、よくもこんなひどい論理展開をするものだ。
学位取り消しに当たるかどうかは、「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係があるかどうかであって、重大な影響を与えたことという要件はない。「不正の方法」に該当する行為があり、それによって「学位の授与を受け」たと認定できれば、アウトである。
報告書中にある「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えている」ことで、必要かつ十分にアウトであり、報告書中にある「重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」は、誤った法解釈である。
2014年7月17日付けの弁護士ドットコムの配信ニュースの中にあるのだが、早稲田大学の専任教員を3年間勤めたことがあるという人が「この決定は慚愧に堪えません。『早稲田』を誇りに頑張ってきた卒業生、特に早稲田から送り出された博士の方たちの価値を貶める効果を持ってしまうと思うのです」と述べている。
また、2014年7月25日付けの弁護士ドットコムの配信ニュース曰く。
① 理化学研究所の小保方晴子リーダーの博士論文について、早稲田大学の調査委員会が「不正はあったが、博士号の取り消しにあたらない」と判断したことに対して、同大学大学院先進理工学研究科の教員有志は7月24日、異議を表明する文書を大学に提出した。
② 小保方リーダーの博士論文の冒頭が海外サイトの無断引用(コピー&ペースト)だったことについて、「執筆者の学問的な誠実さと能力の欠如を強くうかがわせる」と指摘し、「このような論文に本来、学位授与がなされることはありえない」と、調査委員会の結論を強く批判している。
③ さらに、今回の調査委員会のメンバーが、小林英明委員長以外は非公表とされていることについて、「どの程度の解釈の振れ幅があったのか、小林弁護士以外の委員の見解を正す機会がない」「透明性・信頼性を欠く」と非難している。
これらの見解は、まったくもってそのとおりである。
早稲田大学の威信が地に落ちてしまっている中で、辛うじて早稲田大学関係者の良心が示されているということだろう。
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