わさお日記

わさおの時事川柳・五行歌、俳句、短歌、十行歌、その他

スタップ疑惑・「早稲田の森が泣いている」

都の西北 早稲田の森に
聳(そび)ゆる甍(いらか)は われらが母校

われらが日ごろの 抱負を知るや
進取の精神 学の独立

 ご存じ、私学の雄、早稲田大学の校歌の一節である。「進取の精神」、すなわち、みずから進んで物事に取り組む精神を基本理念とするのが早稲田大学である。

 しかるに、今、残念ながら、早稲田の森も、早稲田大学校歌も、泣いている。

 スタップ疑惑の小保方晴子氏に係る「博士論文」をめぐる早稲田大学調査委員会が下した結論に至る論理展開は、支離滅裂である。そして、コピペの女王、小保方氏の肝心の「博士論文」は、本来、箸にも棒にもかからないものだ。

 これでは、早稲田大学の基本理念である「進取の精神」は、どこに行ったのとなってしまう。だから、早稲田の森は、泣くしかない。


 スタップ疑惑の小保方晴子氏は、早稲田大学の卒業生で、同大学から博士号の学位を授与されている。

 
 弁護士ドットコムの2014年7月17日付けの配信ニュース曰く。

 理化学研究所小保方晴子ユニットリーダーの「博士論文」をめぐり、早稲田大学調査委員会(委員長・小林英明弁護士)は7月17日、記者会見を開いた。
 調査委は、小保方リーダーの博士論文に数々の「問題点」を指摘しつつも、小保方リーダーの行為が「学位取り消しの規定にあたらない」と結論付けた。

 しかし、早稲田大学調査委員会が記者会見場で配布した報告書の中身を読んでみると、論理明快の逆で、論理矛盾の見本みたいな報告書である。

 早稲田大学調査委員会の委員長が弁護士なだけに、それなりに検討したという体裁は整えられてはいる。

 報告書のII.は、「II.本件博士論文の内容の信憑性及び妥当性の検証、並びに学位取り消し規定の該当性」と、銘打たれている。これらを順次紹介しつつ、論評させてもらう。

報告書
1.本件博士論文の内容の信憑性及び妥当性
 
 「本件博士論文には、上記のとおり多数の問題箇所があり、内容の信憑性及び妥当性は著しく低い。そのため、仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった。」と認定した。

 報告書のこの箇所は、読む者をして、笑わせる。これを読んで笑わない人は、おそらくいないであろう。

 「本件博士論文には、上記のとおり多数の問題箇所があり、内容の信憑性及び妥当性は著しく低い。」とある。小保方博士論文には、多数の問題箇所があり、内容の信憑性及び妥当性は著しく低い、と指摘している。

 問題箇所が多数ありすぎて、内容の信憑性及び妥当性は、著しく低い、つまり、信憑性及び妥当性は、ほとんどないと指摘しているのだ。要するに、内容の信憑性及び妥当性において、箸にも棒にもかからない。小保方博士論文は、アウトだとしているのだ。

 そして、「仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった。」と認定している。

 報告書のこの箇所も、笑わせる。早稲田大学調査委員会は、本当に、真面目に検討しているのだろうか。

 だって、まず、「博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備が」あったと断定しているのだ。そして、「仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ、本件博士論文が博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった。」と認定しているのだ。

 「審査体制等に重大な欠陥、不備が」あるということは、博士論文を審査する能力がないということだ。そして、報告書は、「審査体制等に重大な欠陥、不備がなければ」、本件博士論文が博士論文として合格することはない、と断じている。

 ということは、博士論文を審査する能力がない審査体制が、博士論文として合格する要件を欠く小保方博士論文を合格させてしまったことを意味する。

 つまり、小保方博士論文は、重大な欠陥、不備があった審査体制等であったがゆえに、間違って、博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与された、と断定しているのだ。

 審査体制等に重大な欠陥、不備があれば、もはや有効な審査体制とは言えない。であれば、それだけで、間違って、博士論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されたのだから、博士論文の合格及び博士学位の授与は無効である。これが論理的帰結の常識である。

 したがって、ここまでの理由だけで、十分に、小保方氏に対する学位の取り消しがなされてしかるべきである。
 

 本来、小保方氏に対する学位の取り消しがなされてしかるべきであるのに、それをしないために、早稲田大学調査委員会は、無理な論理構成を持ち出す。

報告書
2.学位取り消し規定の該当性

(1)早稲田大学学位規則第23条の要件

 早稲田大学における学位取り消しの要件は、「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき」である。

(2)学位取り消し規定の解釈と適用「不正の方法」

 不正行為を広く捉え、過失による行為を含むとした上で、「著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起行為は不正行為にあたる。」と認定した。
 但し、「不正の『方法』といえるためには、不正行為を行う意思が必要と解釈すべきであるため、過失による不正行為は「不正の方法」に該当せず、「不正の方法」に該当する問題箇所は、序章の著作権侵害行為及び創作者誤認惹起行為など、6箇所と認定した。

 報告書のこの箇所も、笑わせる。早稲田大学調査委員会は、本当に、真面目に検討しているのだろうか。

 不正行為には、過失による行為を含むとした上で、「著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起行為は不正行為にあたる。」と認定している。

 しかし、その次の論理展開を読むと、調査委員会のメンバーは気は確かなのか、と疑ってしまう。

 「不正の『方法』といえるためには、不正行為を行う意思が必要と解釈すべきであるため、過失による不正行為は「不正の方法」に該当せず」、ときた。

 不正の『方法』は、客観的に見て、不正の『方法』といえればいいのであって、故意による不正行為はもちろん、過失による不正行為も「不正の方法」に該当する。これが法解釈の常識である。

報告書
2.学位取り消し規定の該当性

(3)学位取り消し規定の解釈と適用「不正の方法により学位の授与を受けた」

 「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係(重大な影響を与えたこと)が必要と解釈すべきであるところ、本研究科・本専攻における学位授与及び博士論文合格決定にいたる過程の実態等を詳細に検討した上で、「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」と認定した。
 その結果、本件博士論文に関して小保方氏が行った行為は、学位取り消しを定めた学位規則第23条の規定に該当しないと判断した。

 報告書のこの箇所に至ると、よくもこんなひどい論理展開をするものだ、と呆れてしまう。

 学位取り消しに当たるかどうかは、「不正の方法」と「学位の授与」との間に因果関係があるかどうかであって、重大な影響を与えたことという要件はない。「不正の方法」に該当する行為があり、それによって「学位の授与を受け」たと認定できれば、アウトである。

 報告書中にある「上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えている」ことで、アウトであり、報告書中にある「重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。」は、誤った法解釈である。


 そして、報告書の論理展開の支離滅裂さは、最後の箇所にも出てくる。

報告書
V.結論(付言)

 ・転載元を表示せずに他人作成の文書を自己が作成した文書のようにして利用する行為は、研究に携わる者が作成する論文等において、決して許されない。小保方氏について、学位取り消し要件に該当しないと判断したことは、この問題点の重大性を一切低減するものではない。

 早稲田大学がひとたび学位を授与したら、それを取り消すことは容易ではない。それほど学位の授与は重みのあるものである。早稲田大学において学位審査に関与する者は、その重さを十分に認識すべきである。

 この報告書にあるように、論文のコピペは「決して許されない」重大なものであると認識する場合の結論は、本件は学位取り消し要件に該当する、となる。報告書の論理展開は、あべこべだ。

 それに反し、学位取り消し要件に該当しないと判断することこそが、この問題点の重大性を低減せしめているのだ。

 で、報告書の最後の二行は、それこそ笑止千万である。

 「早稲田大学がひとたび学位を授与したら、それを取り消すことは容易ではない。それほど学位の授与は重みのあるものである。」ときた。だから、無理やりな論理展開をしてでも、小保方博士論文に係る学位は取り消せない、と自白しているようなものである。

 早稲田大学って、大丈夫なんだろうか?



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